《MUMEI》 いつものパターンピンポ−ン 早朝に、玄関のチャイムが一回鳴った。 今までのパターンでいくと、それは… 「やっぱりお前か、高山」 「おはよう、田中君。いよいよ本番だね」 本番は午後一時だというのに、高山が俺のアパートに来たのは 午前七時だった。 今回俺は徒歩で学校に行くから、身支度は整えてあった。 「朝食は?」 「…食べた」 (正確には飲んだだけどな) 「じゃあ、行こう!」 高山は俺を引っ張った。 「ちょ、いくら何でも早いだろ?」 他校生の高山は、一般公開が始まる十時までは学校に入れないはずだった。 …普通なら。 高山は、満面の笑みで俺を駐車場まで引っ張っていった。 駐車場には、エンジンがかかったワゴン車が一台止まっていた。 「お待たせしました、秀さん」 高山は、運転席にいるスキンヘッドの男性に声をかけた。 (秀さんって…) その名前は、昨日祐から聞いたばかりだった。 「秀さんは、志穂さんのお兄さんで、うちの父さんの弟なんだ」 俺を後部座席に押し込みながら、高山が説明した。 車内は荷物に溢れていた。 前へ |次へ |
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