《MUMEI》

「……納得したわ。あんた、ジロが好きなの?」

そうか、姉貴と俺は病院で時間が止まっている。


「今はちゃんと可愛い弟だよ。」

流石に恋人のことまでは言えない。



「謝らなきゃいけないと思ってた。

自分ばかり幸せで、病院で、あんたに酷いこと言った……」

姉さんは素直だ。
太郎兄みたいに優しく、七生みたいに豪快に、二郎みたいに繊細に、是清みたいに愛らしく素直だ。

全て俺に持ち合わせないものを姉貴は持って生まれてきた。
俺には羨ましくて、ほんの少し自慢の姉だ。

「思い詰める程のことじゃない、それに俺は今幸せだから。」

俺は二郎に満たされない想いを姉さんに、姉さんは両親への愛を俺に、互いに欲していただけだ。

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