《MUMEI》
険悪な調理室
車に積まれていた荷物は、秀さんが店長をつとめる中華料理店で使っている点心用のセイロだった。


俺達三人が、向かった先は、文化祭で料理部が開いている点心喫茶の調理室だった。


「「おはようございます!」」

「…おはようございます」

俺は、長身の二人の後ろから、隠れるように調理室に入った。


「よう!祐也!おはよう」

そこには、祐と


「ご苦労様」


ものすごく不機嫌な安藤先輩がいた。


実は、昨日。


俺は、ゲームに必死で全く見ていなかったが


よりによって、俺と祐の攻防を、安藤先輩がしっかり見ていた。


…と、俺は、津田さんに引っ張られる直前に、葛西先輩から聞いていたのだ。


(参ったな…)


俺は、とりあえず必死で料理部の準備の手伝いを行った。


午前九時。


希先輩が、クラスの出し物のバザーの売り子をすると祐から聞いていた高山はダッシュで二年生のクラスのある校舎に向かい


店の開店準備があるからと、秀さんも帰ってしまった。


演劇の準備は人数が足りているから、役者は正午にステージ裏に集合だった。


残り、三時間。


俺は、調理室で固まっていた。

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