《MUMEI》
双子登場
十時になると、調理室の動きが慌ただしくなった。


俺は全く知らなかったが、料理部の点心喫茶は昨日大人気だったらしい。


その評判を聞き付けた在校生達が、調理室の隣にある喫茶用の教室に殺到していた。


「ボーッとしてるなら、洗い物やって!」

「は、はい!」


俺は、安藤先輩に言われて急須と湯飲みをひたすら洗っていた。


安藤先輩と祐は、並んで肉まんを作っていた。


(普通、皮から作らないだろ)


料理部の肉まんは、かなり本格的だった。


その時。


「すみません、作ってるとこ見せてもらえませんか?」


黒いYシャツに黒いタイトスカートの女性が調理室の扉を開けた。


「美人の見学なら、大歓迎だよ」


祐が言うように、女性は、俺達より、少し年上のキレイ系だった。


しかし、次の瞬間、現れた女性に、さすがの祐も驚いた。


「もう、せいこちゃんは、勉強熱心なんだから」


白いブラウスに白いフレアスカートの女性は、話しかけている女性と


同じ顔と声をしていた。


「だって、美味しかったら気になるのが、当たり前でしょ」


せいこちゃんと呼ばれた女性は、同じ顔と声の女性に微笑んだ。

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