《MUMEI》
空手 〈私〉
道場では、小学生ぐらいの子供たちが元気一杯、一心不乱に練習している。



「おー、やってるか〜?」



清水さんの声に、子供たちは動きを止めて姿勢を正すと、



「お願いします!!」



と、一斉に頭を下げた。



迫力に圧されていると、そのうちの一人の男の子が顔を上げるなり、



「あーっ!!みつるだ!!」



と、叫んだ。


その声に反応して、顔を上げた子供たちは、私を見ると、口々に



「みっちゃんだ!」


「おお!みつるだあ!」


「ミッチー!!」



とか言いながら、私のほうに突進してきた。



「…え!?―…うわっ!!」



あっという間に数人の子供達に取り囲まれる。



私がうろたえていると、最初に私に気付いた男の子が、



「おい、何ズル休みしてんだよ!!オレとの勝負が怖くなったか!!」



と、私のお腹をパンチした。



「え!?いたっ!」



椎名くんに助けを求めて視線を向けると、椎名くんはお腹を抱えて笑っていた。




「違うもんね!!みつるはあんたと勝負なんかしなくても強いもん!!ね〜♪」



そう言って、私に同意を求めてきたのは、二つ結びの女の子。



私が微笑みを向けると、その子はちょっと赤くなってもじもじしだした。



その様子を見た男の子は、面白く無さそうに、



「やってみねえと分かんねえだろ!!」



と、返した。



「正樹って、いっつもそればっか!!」



そう言い返す女の子に、マサキ君と呼ばれた男の子は、



「…エリカだって、いっつもみつるみつるウルセーじゃん」



と、反撃する。



2人は、にらみ合った後、同時に、ふん、とそっぽを向いた。


…こんなところでも、恋のバトルが…



椎名くん、笑ってる場合じゃないって…!

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