《MUMEI》
双子の正体
「あ、ここにいたのね」


「「洋子さん」」


白と黒の双子は、同時に相田先生の名前を呼んだ。


「愛理さんが一人で寂しがってたわよ」


「「あ、いけない!」」


(…愛理さん?)


それは、劇の登場人物で、相田先生のいとこの妻の名前だった。


しかし、台本にはあんな目立つ双子の事は書いていなかった。


(え〜と、俊彦さんが、今三十一歳で、劇の頃が二十二〜三歳だから…)


双子は、今の外見は、二十歳前後に見えた。


(やっぱり、いる…よな?)

首を傾げる俺に、相田先生が近付き、説明した。


双子の名前は


白い方が工藤(くどう)やこで、黒い方がせいこ。


彼女達は、劇に登場する喫茶店『クローバー』の店長・咲子(さきこ)の娘だと。

台本から二人を削除したのは、ぴったりな子役を探す事ができなかったからで、だから、台本の『咲子』の設定を事実と違う独身にしたらしい。


(まぁ、普通は見つからないよな)


双子の子役なんて、普通はいないと思い、俺は納得した。


「愛理さんも紹介するから、一緒に来てくれる?」

「はい」


(助かった!)


こうして俺はやっと調理室から解放された。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫