《MUMEI》

◇◆◇

 帝から知らせがあったと言伝があったのは、それから間も無くの事であった。

「浅葱‥それは‥本当なの‥?」

 不安げな表情で縋り寄る姫君に、浅葱は頷いた。

「どちらかを手放すように、と」

「そんな事‥」

 誰が出来るだろうか。

 大切な愛娘のどちらかを手放せなど、そのような事を帝が言った事に神夜は落胆した。

 たとえそれが帝の命令であっても、神夜は頑として従うつもりはなかったのである。

 だが。

「姫様‥なりません」

 浅葱が神夜の両肩に手を置き、悲しい目をして言った。

「少しの間、辛抱下さいませ」

「でも‥この子達はまだ‥」

「存じて居ります。ですが‥此処は私にお任せ頂けないでしょうか‥」

「‥‥‥‥‥‥‥」

 浅葱の必死な眼差しに、神夜は渋々頷いた。

◇◆◇

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