《MUMEI》 「助け……」 声が出ない。 呼吸も困難な程走り上手く人気の無い場所に追い詰められた。 「キレーな面めちゃくちゃにしてやろうか?」 「動けねぇようにすれば?」 完璧に罪に問われる会話内容だ。 「あふ、あ……ぃ」 女の喘ぎが叢で聞こえた。 あまりにリアルな音声に奴らの酔いはみるみるうちに冷めてゆく。 変な光景だった。 三人の男に囲まれ女ばかりが脱ぎ散らかしている、二人は気配に気付き逃げ出したが、一人の男はまだ女を相手していて、肌を触れ合わすことさえも億劫なようだ。 「……面倒くさいな」 溜息をついてから、男はこちらを睨み付けた。 凄みのある目付きにこちらに言ったのかと錯覚した。 あの、イカレた酔っ払い集団を睨んだだけで追い返したのだ。 怖くて、異常で、その形の無い強さに惹かれた。 俺が昭一郎と初めて会った瞬間だった。 前へ |次へ |
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