《MUMEI》 愛理さんと普通の男(ひと)「孝太君とは似てないわね」 愛理さんは、俺を見てきっぱりと言った。 「かなり変更しましたから。でも、他はかなり似てますよ」 相田先生は、苦笑しながら説明した。 「まぁ、洋子さんがそう言うなら、期待してるから、頑張ってね」 「ありがとうございます」 俺が頭を下げると、愛理さんは立ち上がり、会計に向かった。 立ち上がった愛理さんは、俺より少し背が高かった。 そして、それ以上に腰まで伸びた長い髪が印象的だった。 「今日は先生のいとこは来てないんですか?」 「来てるわよ。今、職員室に顔出してる」 相田先生のいとこで、愛理さんの夫の貴志(たかし)さんは、相田先生と同じ教師だから、この学校にも知り合いがいるのだと、相田先生は説明してくれた。 「私のいとこだから、商店街の人達と違って見た目も中身も普通の人よ」 そう言って、相田先生が指差した先には、 普通に年を重ねていて かっこいいとも綺麗とも言えないが、醜いとも言えない外見で 日曜日でも、いかにも教師なスーツを着ている男性がいた。 俺は、久しぶりに普通の人を見たような気がしていた。 前へ |次へ |
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