《MUMEI》
愛理さんと普通の男(ひと)
「孝太君とは似てないわね」


愛理さんは、俺を見てきっぱりと言った。


「かなり変更しましたから。でも、他はかなり似てますよ」


相田先生は、苦笑しながら説明した。


「まぁ、洋子さんがそう言うなら、期待してるから、頑張ってね」

「ありがとうございます」

俺が頭を下げると、愛理さんは立ち上がり、会計に向かった。


立ち上がった愛理さんは、俺より少し背が高かった。

そして、それ以上に腰まで伸びた長い髪が印象的だった。


「今日は先生のいとこは来てないんですか?」


「来てるわよ。今、職員室に顔出してる」


相田先生のいとこで、愛理さんの夫の貴志(たかし)さんは、相田先生と同じ教師だから、この学校にも知り合いがいるのだと、相田先生は説明してくれた。


「私のいとこだから、商店街の人達と違って見た目も中身も普通の人よ」


そう言って、相田先生が指差した先には、


普通に年を重ねていて


かっこいいとも綺麗とも言えないが、醜いとも言えない外見で


日曜日でも、いかにも教師なスーツを着ている男性がいた。


俺は、久しぶりに普通の人を見たような気がしていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫