《MUMEI》 来年の演劇点心喫茶を後にした俺達が向かった先は、二年生の教室だった。 (やっぱりな) 教室内で行われているバザーの売り子は五人いるのに、二人の売り子の前にだけ、異様に長い行列が出来ていた。 「うわ、あれ、俊彦役の子? 実物よりかっこよくない?」 高山を見た時の愛理さんのテンションは、俺の時とは雲泥の差だった。 「「隣、蝶子さんにちょっと似てる…」」 希先輩を見て、双子が同時に呟いた。 (言われてみれば、そうかも…) 希先輩は、身長や雰囲気が蝶子さんに似ていた。 「来年は、あの二人で演劇やれば? 『シューズクラブ』ってタイトルで!」 ハイテンションを維持したまま、愛理さんが相田先生に提案した。 「あの二人、他校生と運動部のマネージャーですから。それに、俊彦さんから、『蝶子の役は誰にもできない』って言われてますから」 相田先生は、苦笑しながら説明した。 「…そうだった」 そう言いながらも、愛理さんは名残惜しそうだった。 「第一、俊彦さんと蝶子さんの話って、風紀上大丈夫なのか?」 「あ−…」 貴志さんの質問に、愛理さんは 「…ダメ。十八禁」 と笑って答えた。 前へ |次へ |
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