《MUMEI》
本番間近
(目立ってきたなあ…)


長身の愛理さんに、見覚えのない教師、美人の双子に、高山や希先輩も加わり大所帯になった俺達は、明らかに注目を浴びていた。


「じゃあ、体育館に行きましょうか!一時から本番だからね!」


先頭に立った相田先生は、周りに聞こえるような大声を上げた。


「あ、祐也、いた!」


そこに、津田さんと


「俺も行きます!」


拓磨も加わる。


「目立ってんな〜!」

「お前も出るだろ!」


守は俺が巻き込んだ。


俺達の後ろには、自然と行列ができていて、皆、一人だけ地味な俺を不思議そうに見ていた。


「祐也、客寄せご苦労様」

ステージ裏に入ったところで、今日初めて俺は真司や他の同級生達に会った。


「俺のわけないだろ」


体育館を満員にしたのは、明らかに他の連中の力だった。


「終わる頃には、皆、田中君に夢中かもよ?」


そう言って、俺に微笑んだのは、真司の姉の部長だった。


大人っぽい彼女は、今日は『咲子』を演じる。


「それはダメ!」


津田さんが俺にしがみついた。


「…始まるぞ」


拓磨が俺達を引き離しながら、小声で告げた。

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