《MUMEI》

◇◆◇

「里親を‥?」

 式部の言伝に、巫女姫は仰天した。

「どうして‥またそのような‥」

 すると式部は、徐に事の次第を説明した。

「では‥胡蝶姫様を里子に‥」

 こくり、と浅葱は頷く。

「どなたか‥祇園に住まわれている夫婦をご存じではないでしょうか‥」

「夫婦‥」

 巫女姫は鈴音の父母の事を思い出し、浅葱に告げた。

 浅葱は安堵の色を浮かべる。

「そのお二人なら‥」

 はい、と夜桜は答えた。

「それから‥」

 夜桜は続ける。

「彼女を‥神楽姫様の護衛につけてやっては下さいませんか」

「彼女‥と言いますと‥」

 浅葱がきょとんとすると、巫女姫の傍らに七尾が姿を現した。

 不思議な事に、その姿は浅葱の目にもはっきりと見えていた。

 夜桜は真剣な目差しで式部を見つめる。

「お願い‥出来ますか」

 浅葱は刹那の後、微笑を浮かべ頷いた。

◇◆◇

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