《MUMEI》 女王・麗子「これをどうにかしろって?」 麗子は、初対面の孝太を上から下まで見つめた。 「頼むよ、麗子」 俊彦が頭を下げる。 「ほら、お前からも頼めよ」 和馬は、孝太の頭を押さえつけ、無理矢理頭を下げさせた。 ただでさえ、無理矢理麗子のところへ連れて来られた孝太は、ますます不機嫌で… (津田さん、ごめん) 「何で俺が頭を下げなきゃいけないんだ? こんな、田舎の女に」 セリフとはいえ、津田さんに暴言を吐くのは、かなり勇気がいる事だった。 俺は、この段階で観客のほとんどを敵に回した。 「いい度胸ね〜、とりあえず」 麗子が合図すると、俊彦と和馬が孝太を押さえつけた。 「なっ…?」 身動きがとれない孝太に麗子が近付く。 「これ、邪魔」 麗子はまず、分厚いレンズの丸メガネを奪い、床に投げた。 驚く孝太の目の前で、麗子はハサミを取り出した。 「この前髪も邪魔!」 麗子が、孝太の前髪を切り落とした。 実際津田さんが切ったのは、俺がかぶっていたウィッグなのだが、観客は、そのリアルな光景に、息をのんだ。 そして、ステージが真っ暗になった。 前へ |次へ |
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