《MUMEI》

椎名くんが道場の奥の2つの扉の前で立ち止まった。



「ここ、更衣室。…男用は、こっち」



そう言って、2つのうち左の方の扉を開けた。



「…入って。―…汗臭いけど、かなり」



促されて、中に入る。


別に、椎名くんが言うような匂いは気にならなかった。


ふと、棚にずらりと並んだものに目を留める。



「…これって―…」


「ん??…あ―…、師匠が全部並べてるんだよ」



ものすごい数のトロフィーや盾、賞状、メダル…



「これって、ここの皆の!?」



感動して聞くと、



「んー、団体のはここにあるけど、個人のは皆家に持って帰るからな。
…ほとんどは、おれの」



椎名くんは少し笑って答えた。



「…すごいねー…」



本当に感激して、輝くトロフィーたちをまじまじと見つめてしまった。



「でもまあ、小学校の頃からのだし。
…そんなすごくねーよ?」



困ったように言う椎名くん。



「ううん!!すごいよ!!」


「…そーかあ??」


「うん!!絶対、すごい!!!」



私が言うと、椎名くんは少し目を臥せて、頭を掻きながらそっぽを向いた。



「…そりゃ、どーも」


「ふふ」



…褒められると、照れるんだよなあ。


椎名くんって。

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