《MUMEI》

着替え終えた私と、椎名くんが道場へ戻ると、



「…あれ、蓬田さんは着替えなかったの??―…余りの道着あるけど」



と、指導中の清水さんが言った。



「…あ、大丈夫です。ちょっと護身術程度にって思って…」



と、椎名くんが答える。
確かに、椎名くんは動きやすい服装だ。




「そっか。…まあ、そうだな!
―…じゃあみつる、優しく、お手柔らかにな」



そう言う清水さんに答えたのは、椎名くんだった。



「分かってますって!!」



それから、はっとしたような表情になった椎名くんは慌てて付け加えた。



「…って、椎名くんが言ってます!!」



―…椎名くん、それ今までに何回使った…??



「??…まあいいや。頑張れよ」



少し不思議そうな顔をして、清水さんはそう言うと、また子供たちの指導に戻った。



椎名くんが

その風景を、とても優しい眼差しで眺めていた。

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