《MUMEI》
注意事項
俺は中央の椅子に座り、津田さん以外の共演者達に囲まれていた。


津田さんは、集団から少し離れた位置に座っている。

俺達は、そのまま静止した状態で相田先生の言葉を待っていた。


「お客様にお知らせ致します。
これから、スピーカーから流れる声は、麗子の心の声です。
それから…」


(それから?)


予定には無かった部分に、俺は首を傾げた。


「男子! 驚き過ぎてセリフ忘れたなんて言い訳は許さないからね!」


相田先生の言葉に、ステージ上にいる俺以外の男子生徒がビクッと反応した。


「それから…」


(まだあるのか?)


相田先生は、最後に観客に向けて一言。


「騒がないで下さいね」


それだけ言って、マイクのスイッチを切った。


[あんな顔、反則よ。可愛いすぎるじゃない。
あ〜あ、もっと優しくしとけば良かった]


スピーカーから、麗子の心の声が流れてきた。


「…これが、あの、孝太君!?」


商店街の、女性陣のリーダー瞳(ひとみ)と、着物姿の薫子(かおるこ)・それに、咲子が同時に叫んだ。


「ほ、ほほら、俺の目に狂いは無かった、…だろ」


高山は、今日初めてセリフをかんだ。

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