《MUMEI》

まずは、柔軟体操から始めた。


こうやって柔軟体操をしてると、椎名くんの身体がすごく柔らかいのが分かる。


―…こういうのを、しなやかな体、っていうのかな。



「…今日はちょっと走ってもらうだけだから。
―…あんまり体力落ちすぎないようにするだけでいーから」



椎名くんが言う。


私に気を遣ってるのは分かった。



「…あ、じゃあさ、一緒に走ろう!!」



私が提案する。



「え??…でも、おれ今お前の体だし」



戸惑う椎名くんに、



「いいのいいの!!…私、運動不足だからさ。
椎名くんが鍛えてやって!!」



笑って答える。


本当に、運動不足すぎると思うし。



「…わかった、じゃあ、行こ!」



椎名くんが立ち上がる。


私も後に続く。



「…師匠に、『ちょっと走ってくる』って言って」



椎名くんが言う。



「し、師匠!!…ちょっと走ってきます!!」



私が言われた通りに言うと、



「おー!気をつけてな!!」



と、返ってきた。



「―…行ってきます!!」



ふたり同時にそう言って、道場の扉を開けた。

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