《MUMEI》
観客にお披露目
この時点では、俺の姿も顔も観客にはまだ見えていなかった。


俺を囲む集団が、一人ずつ俺の容姿の感想を述べていく。


そして、最後の一人が感想を言い終わった。


「…ちょっと通してくれ」

俺のセリフと共に、集団が俺から離れた。


観客が、息をのみ、俺に注目しているのがわかった。

次の瞬間。


相田先生の注意事項を思い出した観客は、自分の口を必死で押さえて、声を殺していた。


(いい観客だなあ)


感心しながら俺は椅子から立ち上がり、津田さん…


麗子の元に歩み寄る。


「何よ」


[そんな大きな…吸い込まれそうな青い目で、私を見ないでよ〜!]


麗子の心の声が言うように、俺の目は、普通よりかなり大きかった。


そして、そんな俺の瞳の色は


『祐也の瞳はいつも晴れだね』


旦那様がそう言っていたように、晴れた日の青空によく似た色をしていた。


「いろいろ…ありがとう」

孝太は少し照れながら、麗子に小声で囁いた。


[か、可愛いじゃないの〜
で、でも…これで終わりなんて嫌!]


麗子が孝太の袖を掴んだ。

「まだよ!ちゃんと接客できるまで、練習しなさい!私で!」

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