《MUMEI》

『…おはよう。』


翌日…校門の前で渉に挨拶をされた。


その周りにいた女子達の視線を感じた私は、慌てて渉の手を掴み、体育館裏に引っ張った。


『ちょっと渉!
学校で声掛けないでよ。
渉は知らないかもしれないけど、あんたかなり学校で人気あるんだからね!
アイドル的存在の渉と私が仲がいいなんて思われたら私…今以上に、学校でシカトされちゃうじゃん。』


『…お前、シカトされてんの?』


『まぁね…。元彼が私に3股かけられたって噂、流しまくってるから…。』


『…ふ〜ん。
知らなかった。でも、俺も誰とも口聞かない時あるよ。一緒じゃねぇ(笑)?』


渉は笑った。


『全然違うよ(怒)!
渉には、みんなで近づきずらいだけ…。それに、渉が学校で無口にしてるんじゃん!みんな渉と話したいのに話せないんだよ…。』


『…ふ〜ん。
どっちでもいいや!
…とにかく人前では、璃久に話し掛けなけりゃいいんだろ?』


『…まぁ〜そういう事。
これから気をつけて。』


『…おぉ。
あと、稜兄から伝言!
“昨日はお疲れ様。続きを楽しみにしてるよ。”だってさ。』


『…うっ…分かった。』


『…“続き”って何?
あの後何してたんだ?』


“……。…どうしよう。
下着姿になりました!なんて言えないし…。”


『…別に。…何も。』


『…そうか。
あのさ〜璃久。稜兄は、かなり変わってるけど、悪い奴じゃないんだ。
璃久を困らせて、楽しんでるだけだと思うから…。
なんかあったら、俺に相談しろよ。』


『…うん。そうする。』


とは言ったものの、渉を騙して100万円も稼ごうとしている私は、渉に相談する資格なんて無かった。


─放課後─


下駄箱の中に、小さな紙が入っていた。


───────────
稜兄からメールあり。
学校終わったら、すぐ
家に来い!だとさ。 渉
───────────


“はぁ〜。今からまたあの[稜兄]の餌食だよ…。”


足取り重く、坂城家に歩いていると、人混みが無くなったあたりの路地で渉が立っているのが見えた…。


私は、周りにうちの高校の生徒がいないことを確認して、渉に近づいた…。


『…よぉ。手紙見たか?
稜兄がお待ちかねだぞ。
早く帰ろうぜ。』


『…うん。…もしかして私の事待っててくれたの?』


『…まぁな。
稜兄と璃久が二人きりになるの…危険そうだし。
それに“続き”ってのも気になるしな…。』


『…そっかありがとう。』


“渉って意外と優しいんだな〜。気難しいタイプだと思ってたのに…。
あっ…稜兄があんなのだから余計そう思うのか…。”


私は、一人納得しながら、渉と一緒に坂城家へと急いだ…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫