《MUMEI》
身ニ浸ケル
其の人は窓の隙間から覗き見ていた。
其れを待てども待てども現れない。

家は雨音で充満していた。

退屈な日々は読書で掻き消していたがそんなものも長くは続かなかった。

誰にも云えていないが友人が一人、其の人には出来たのだ。

「御食事を取って下さいましね。」

屋敷の世話係は必ず念を押して確かめてくる。
以前はどうしても食べ物を前にすると吐き気をもよおして窓から出されたものを投げていたが、野犬が近付いて来たので直ぐに判明した。

一際、退屈を募らせ、湿気は部屋の明かりを奪い、じめゝとさせる。

毎月の三日が恨めしい。
其れは調度、今日だったのだ。

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