《MUMEI》 驚異の演技力それから、麗子と孝太は、閉店後の『シューズクラブ』や『クローバー』で接客の特訓を行う。 一方で、麗子は孝太に素直になれない想いを咲子に愚痴ったり 麗子の気持ちに気付いた結子と愛理が麗子にアドバイスしたり 他にも… とにかく、後半になると、麗子はあらゆるシーンに登場する。 主役だから、普通かもしれないが、麗子のセリフはかなりの量だ。 (すごい…) そのセリフを間違える事なく感情を込めて言いながら、完璧な演技を続ける津田さんに 俺も 他の共演者達も 裏方も 観客も、引き込まれていった。 [孝太に会いたくて、早く来ちゃったな] ソワソワしている麗子の元へ、孝太が現れた。 「遅いわよ、孝太!やる気あるの?」 […また言っちゃった] 「…ちゃんと、五分前に来た」 膨れっ面で反論する孝太。 [か、可愛い。今日こそ、ちゃんと、…謝らなくちゃ] 深呼吸する麗子。 「…麗子?」 孝太が麗子の顔を覗き込む。 「私より遅かったら遅刻なの!」 [あ〜、…まただめだった。孝太が可愛いから、悪いんだ] そんな、不器用な麗子を津田さんは器用に演じていた。 前へ |次へ |
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