《MUMEI》
終盤
『シューズクラブ』の店員として認められ、人気の出てきた孝太。


素直になれない麗子は、毎月孝太の客として来店するが、いつも女王様的な態度をとってしまう。


気が付くと、孝太がこの商店街に来て、もうすぐ一年になっていた。


そんな、三月三日。


孝太の誕生日。


昼間は『シューズクラブ』の誕生日イベント


夜は『クローバー』で誕生日パーティー


告白したくても、なかなか二人きりになれない。


[…こうなったら!]


思い切って麗子は無言で強引に孝太を連れ出した。


二人がたどり着いたのは、商店街の裏通りにある小さな公園だった。


…実際の告白現場は『クローバー』のカウンターだが、観客から見やすいように、台本では公園に変更された。


公園の桜はまだ蕾の状態だった。


「…何だ?」


麗子の気持ちに気付いていない孝太は、不思議そうに麗子を見つめた。


[…どうしよう、どうしたら、ちゃんと好きって言えるの?]


口を開けば女王様になってしまう麗子は、何も言えず、うつ向いていた。


数秒間の沈黙。


「…用が無いなら帰る」


「待って!」

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