《MUMEI》
告白
公園を出ていこうとする孝太に、後ろから抱きつく麗子。


「なっ…」

「こっち見ないで!」


[顔見たら、ちゃんと言えないから!]


(演技、…だよな?)


俺を抱きしめる津田さんの手も声も、震えていた。


「ちゃんと、聞いててね、祐也。孝太にじゃなくて、祐也に言うから」


津田さんが、小声で、俺だけに聞こえるように囁いた。


「好きなの!はっきり自覚したのは、可愛い顔見てからだけど、中身は、きっと、もっと前から好き…だった」


[やっと、言えた]


それは、台本通りの言葉だったが、俺は激しく動揺していた。


(まさか、ここで改めて告白してくるなんて…)


津田さんの、女性特有のあたたかさや柔らかさを俺は背中から感じていたが


(やっぱりだめだ)


俺が、男として普通に反応する事は無かった。


俺は、台本通り、津田さんの腕を振りほどき、振り返ると、津田さんの顔を見つめた。


「…抱きつかれるのは好きじゃない」


これは、孝太のセリフだ。

「ごめっ…」


麗子が謝る途中で、孝太は麗子を抱き締めた。


「津田さん。俺、他に好きな人いるんだ」

俺は、津田さんだけに聞こえるように囁いた。

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