《MUMEI》
ラストシーン
(孝太が無愛想なキャラで良かった)


セリフが棒読みでも、不自然じゃないから。


観客も、照れて棒読みになっているだけだと勘違いしてくれた。


俺は、最後のセリフを口にした。


「俺は、抱きつかれるより抱きつく方が好きなんだ。
…俺も

好きだよ」


セリフに麗子の名前が入っていなくて、本当に良かったと思った。


何故なら


俺が、頭に思い浮かべた人物は


津田さんではなく


やはり


旦那様、だったから。


孝太の告白に、嬉し涙を流す麗子。


観客は、津田さんの演技力の凄さに圧倒されていたから、それが…


俺に振られて流した涙とは気付かなかった。


無言で抱き合い、お互いの好きだという気持ちを確認する二人。


それが、この劇のラストシーンだった。


鳴りやまない、拍手の中、俺は、ゆっくりと津田さんから離れた。


共演者達が次々にステージに上がってくる。


劇は大成功だった。


最前列にいた、愛理さん夫婦も双子も、劇の内容に大満足だった。


その後、ステージ裏に、仲村さん夫妻と屋代さんがやってきた。


「ちょっといい?」


そして、俺はある人物に、屋上に呼び出された。

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