《MUMEI》

いそいそとメールの文面に目を走らせる。



『具合は大丈夫??
最近バンドが忙しくて メールできなくてごめん;
日曜日、楽しみにしてるから^_^』



「…日曜日、楽しみにしてるって!!」



私が椎名くんを振り返って言うと、



椎名くんは少し黙った後、ふいに立ち上がった。



「…いちいち報告すんなって。
―…良かったじゃん、早く元に戻んねえとな」



苦笑してそう言うと、椎名くんは道場へ歩き出した。


私も慌てて立ち上がり、後を追う。



「あ、さっきの姉ちゃん帰ってきた!!」


「おかえり〜!!」



空気で、分かるのかもしれない。

子供たちは、『私』の姿をした椎名くんに、すぐに懐いている。


練習を終えて駆け寄ってくる子どもたちに椎名くんが向ける笑顔は、


苦笑いなんかじゃなくて、いつものあの優しい笑顔だった。

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