《MUMEI》 苛々 〈おれ〉「―…西城先輩からだ!!」 さっきまでの疲れが吹っ飛んだように、蓬田が笑う。 心底幸せそうなその笑顔は、携帯の向こうの『西城先輩』に向けられてる。 そう考えた瞬間、なんかもやもやしたモンが腹ン中に生まれた。 「―…よかったな」 なんでもない風に、伸びをして答える。 メールを読む蓬田を横目で見る。 ―…なんだよ、メール一つでそんな喜ぶのかよ。 …ああ、『西城先輩』だからか。 おれは俯き、頭をがしがし掻く。 「…日曜日、楽しみにしてるって!!」 蓬田はまた、ものすごく幸せそうな笑顔をおれに―…いや、『西城先輩』に向ける。 腹ン中のもやもやが広がる。 それを振り切るように、立ち上がる。 「…いちいち報告すんなって。 ―…良かったじゃん、早く元に戻んねえとな」 上手く笑えねえ。 訳わかんねえ。 イライラ、する。 …何にイラついてんだ?? 蓬田は、何も悪くない。 蓬田は―… …『西城先輩』のことが好きなだけだ。 ―…ああまた、 もやもやが色を濃くする。 …かっこ悪りぃ、おれ。 前へ |次へ |
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