《MUMEI》

『ただいま〜。』


“あれ?稜兄いない…。”


『…稜兄、どこ行ったんだろうね…。』


『…知らねぇ。』


渉は不機嫌そうに、二階へ上がっていった…。


“稜兄。呼び付けといて、勝手だなぁ〜。私も、さっさとやる事やって帰ろ。”

私は、用意しておいたエプロンを取り出した。


『お〜制服にエプロン。
たまんねぇな〜(笑)!!』


『びっくりした〜!!
稜兄!帰ってたの?』


『あぁ今、帰ったとこ。』


“…あっそ……残念。”


『私、今から掃除と夕食の準備するから…部屋に戻ってて。』


『…あと洗濯もだろ?』


『…はいはい。
全部やるからあっち行っててってば!』


『何だよ〜。
今日は機嫌悪いな〜。』


稜兄は、文句を言いながら渋々、自分の部屋に戻っていった。


“ふぅ〜。良かった。”


私は、急いで洗濯から取り掛かることにした。
“…えっ?…マジ?”
洗濯機の前には山積みの洗濯物が…。


“はぁ〜。でも、取り敢えずやるしかない!
他に洗濯物が無いか聞いて、まとめて終わらそう!”


コンコンッ


『渉!璃久だけど…。』


『…どうぞ。』


渉の部屋に入って驚いた。殺風景な程、綺麗に片付いた部屋で、昨日のリビングの散らかりや、山積みの洗濯物は全て、稜兄の仕業だと一目で分かった…。


『…何か用?』


『…あっ。洗濯しようと思って…。洗う物ある?』


『…あ〜。ない。
俺の洗濯は自分でやるからいいよ。稜兄の分だけでもスゴい量だろ?』


『…うん。…まぁ。』


“この2人…本当に兄弟なのかな?
顔は何となく似てるけど、性格は全然違うんだ…。”


次は稜兄の部屋へ…。


コンコンッ


『稜兄。入っていい?』


返事はない…。


恐る恐る部屋へ入ってみると、稜兄は服のままベッドで爆睡していた…。


“やっぱり汚いな…。”


部屋中に雑誌や服が散らかっていた…。


私は、稜兄を起こさないように静かに洗濯物を集め始めた…。


“ん?…何コレ!?”


奥から次々と女性モノの下着が出てくる…。
しかも使用済みっぽい。


“…サイテー。”


私は、急いで洗濯物をかき集め、部屋を出た。


『…どうした?』


渉が、稜兄の部屋の前に立っていた。


『…こ…これ。』


私が集めた女性モノの下着を見て、渉は呆れ顔…。


『あぁ…それは稜兄の女のだよ。って言っても全部持ち主が違うけどな…。』


『…そうなんだ。』


“そりゃ稜兄は変わってるけど、顔はイケメンだもんね。モテるよな…。”


『渉は、稜兄が家に色んな女の人を連れ込むのイヤじゃないの?』


『…まぁ。イヤだけど、稜兄の女好きは治らないから、諦めてるよ…。』


『…そっか。この下着…洗った方がいいかな…?』


『…いや!
捨てていいよ。お前も知らない女の下着なんて洗いたくないだろ?』


『…そうだけど。
一応、稜兄に許可とった方が…。』


『いいって言ってるだろ?捨てろってば!!』


『…分かった。』


“渉…何怒ってるんだろう。そんなに怒鳴らなくてもいいのに…。”


渉の態度は気になったけど、私には大量の仕事が残ってる…。
気にしてなんていられなかった…。


─数時間後─


“終わった〜(汗)”


…稜兄のせいで、この家の家事は本当に大変だ。


“疲れた〜。”
私が、一段落してソファーに座った瞬間、二階の稜兄の叫び声が聞こえた。


『璃久〜!!
ちょっと来い〜(怒)!!』


“…今度は何なの!?”

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