《MUMEI》
約束
俺が待ち合わせ場所に行くと、信二は車から降りてきた。

「よお!信二。
待ったか?」

「いや、さっき来たとこ」

「暑いし、とりあえず中に入ろうぜ」



店に入ると窓際の席に案内された。

注文した料理を食べながら、暫くたわいもない話をしていると、信二は真顔で聞いてきた。


「お前さぁ…
何で〇〇峠走りだしたん?」

「…別にたいした理由は無いけど…
里帰りついでに寄ったら何か懐かしくてさ…」

「それだけか?」

「まあ、そんなとこかな?」

「お前さぁ…
… … …
本当は気づいとんやろ?」

「なにが!?」

「悠一が走りよん気づいとんやろ?」

「… … ああ」

「やっぱりな、あいつ、免許取るまでお前のバイク磨き続けてたらしいぞ…」

「あいつに会ったんか?」

「まぁな、バイク屋で良く会うし、先週も来てたぞ。
お前に言うタイミングが無かったから言わんかったけど…」

「そうか…
これからも面倒見てやってくれや(笑)」


「何でや!!お前が、見てやれよ!」

「… …」

「あいつも、もう二十歳やろが!?
もう… 会っても良いころやろ?」


「あかんて…会わんて、約束したし…
あいつに何もしてやってないのに…
今更、親父面出来んやろ!?」

「出来る出来んの問題か?
お前はどうなん?
会いたいと思わんのか?

約束ったって…
お前が会わんかった訳やないやろ?
会わせて貰えんかっただけやん…」

俺は、いつになく真剣な信二に圧倒され、返す言葉が見つからなかった。

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