《MUMEI》
計算済み
「志穂さんは、気付いてました…よね?」


津田さんは俺より背が高いし、存在感が大きかった。

その津田さんに、志穂さんが気付いていないわけはなかった。


「…ごめんなさい」


志穂さんは、俺を手招きした。


「だから、私と祐希の関係も…田中君の相手の事も、詳しく言わなかったの」


そして、志穂さんは更に、俺について…


「田中君、…その、男性同士だと、…慎と、同じ立場よね?
…それから、お相手、もしかして…

亡くなって…る?」


(やっぱり、この人には敵わない)


俺は、小さく頷いた。


「誰にも、言わないから」

志穂さんの言葉は信用できると思ったから、俺はまた頷いた。


「あの…」


俺達の小声のやりとりを、離れた位置から見守っていた津田さんが口を開いた。

「志貴ちゃんは、私みたいに口の動き読めないし、一応死角で口動かしたから大丈夫よ」


(それも計算済みか)


俺は、ひたすら、志穂さんに圧倒されていた。


(これで、専業主婦なんだからな…)


時々、趣味をいかしてお菓子教室を開いているらしいが、俺は正直、才能溢れる志穂さんが何故専業主婦で満足しているのか、不思議だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫