《MUMEI》

「か弱い……ああ、しかも高等部の人じゃないか。いいかい、礼儀を忘れてはいけないよ。」

低くも無く高くも無く、ハッと人込みの中でも気が付くような妙に落ち着いた声色だった。


中等部の生徒の層がマスゲームのように前から割れて行く。
そこから声の主は現れた。


「うわ、小等部の子のコスプレみたい。」

この学校は私立の名門で、白い学ランが特徴的だ。
それを、こうも着こなしている人は初めて見た。

きらきらと硝子のように輝くプラチナ・ブロンドや色素の薄い肌、碧い瞳は映画の中でだけと思っていた。

「……あ、 う」

緊張して上手く話せない。

「可愛らしい……。一緒に今度遊びたいね?」

一方的に話すその人は溜息をつきたくなるような微笑みを見せた。

「タマ!」

背に受ける威圧。
そして続けざまに受ける蹴り。

肩に激痛が走る。

「大丈夫?!」

銀髪の中学生の人が駆け寄り支えてくれた。

「――――イッ」

がっちり支えてくれたので肩の痺れたとこから意外と力強い握力が伝わる。

「千守、離せ。」

見た目が異国の彼だが和名だった。氷室様のお知り合いらしい。





「酷い言い草だね。千秋兄さん。」

兄さん……、
つまり彼は氷室様の弟様ということか。

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