《MUMEI》
意外とあっさり
『わかった。お前の普通は?』


演劇と、津田さん、…志貴の事を報告した俺に対する忍の返信は、それだけだった。


『本当に、友達か?』


その位の質問を覚悟していた俺は、ホッとしながらいつも通り


「まだ、よくわからない」

そう、送信した。


(人間として、好き、か…)

俺は、それは、忍と旦那様にも当てはまる気がした。

旦那様は、忍が成長してから忍に恋愛感情は抱かなくなった。


それでも、旦那様は忍を信頼し、忍を側においていた。


それは、旦那様が忍の能力を認めていたと同時に…


きっと、人間として、好きだったからだと思う。


(じゃあ、俺は?)


忍と同じように、成長し、旦那様の恋愛対象で無くなった俺。


(俺は、…違うのか?)


旦那様は、俺の事を頭がいいと誉めてくれた。


いい子だと、何度も言ってくれた。


しかし、旦那様は、忍のように、俺を側に置くという選択はしなかった。


『お前を愛していたから、旦那様は死を選ばなくてはならなかった』


(意味、わかんね〜よ!)


旦那様が亡くなった後に、忍が俺に言った言葉の意味を、俺は未だに理解できていなかった。

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