《MUMEI》
注目の的
おかしいのは、アパートの住人だけでは無かった。


(何だ?)


自転車置き場で、妙に視線を感じた。


バサッ!!


(?…何だ、これ)


下駄箱を開けたら、何かが大量に落ちてきた。


(封筒?)


表には、確かに俺の名前が書いてあるが、裏に書いてあったのは、知らない名前ばかりだった。


大半が女性の名前だったが、どう見ても男性の名前にしか読めないものもあり、俺はしきりに首を傾げていた。


「おはよう、祐也」

「あ、志貴。おはよう」


友達は、名前で呼び合う。
敬語は使わない。


普通はそうだと言われて、俺は、昨日の放課後から態度を変えた。


「早速、モテモテね。…無駄なのに」

「モテモテ?」


俺が抱えた手紙の束を指差し、志貴は、告げた。


「それ、全部ラブレターよ。教室も、すごい事になってるんじゃない?」

「男からもあるんだけど」
「祐也が可愛いからね」


志貴は、そう言って、下駄箱を開けた。


バサッ!!


…俺と同じ位、手紙が落ちてきた。


ため息をついた志貴は、俺と目が合うと、苦笑いを浮かべていた。

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