《MUMEI》
合唱コンクール
今日の校内祭のメインは合唱コンクールだ。


ただし、歌うのは、普通の合唱ではなく、流行りの曲や演歌だったりする。


歌のうまさもそうだが、見た目のインパクトも重要だそうだ。


「だからって、何で俺が女装する必要があるんだよ?」


俺は、つきつけられたセーラー服を副委員に押し返した。


「まぁまぁ、いいじゃない」


志貴は既にノリノリで、学ランを着ていた。


「何で、志貴が男装で俺が女装なんだよ。別に志貴がそのままセーラー服着ればいいだろ」


俺達が歌うのは、青春ドラマのラブバラードで、当初は真司が学ラン・志貴がセーラー服の予定だった。


「普通じゃ、つまらないでしょ?お祭りだもの。それより、あんまり抵抗すると、無理矢理着替えさせられるわよ。
皆、優勝商品欲しいし」


一年生の優勝商品は、生徒会特製期末テスト必勝ノートだった。


復習テストの平均点が学年で下位だったクラスは、喉から手が出るほどほしいものだった。


「ここじゃ、嫌だ」


膨れながら、俺が言うと、何故か副委員の声が優しくなった。


「じゃ、じゃあ、保健室に行けばいいよ。更衣室は、二、三年生が使ってるから」

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