《MUMEI》
危険なシチュエーション
「は、なせ…よ!」

「嫌だね。こんな美味しいシチュエーション、誰が逃すか」


いつの間にか、俺はベッドに押し倒され、祐が覆いかぶさっている状態だった。

着替え途中の俺は、上はタンクトップ一枚、下はボクサーパンツにミニスカートという奇妙な格好だった。

「祐也は、素顔見せてモテモテになっちゃったから、今のうちに食べとかないと…ね?」

「『ね?』じゃ、ね〜よ!この変態! 非常識にもほどがあるぞ!」

「…俺の握力に負けないなんて、やるじゃん、祐也」

「必死になるに決まってんだろ!普通!」


祐の両手を掴んで体を押し退けながら、俺は叫んだ。

「普通」

「…え?」

「普通、普通、普通。そればっかりだね、祐也は」

「煩い!俺には大事なんだよ!」

「お前には、無いわけ? 普通が、世間の常識がどうでも良くなる、自分だけの普通が」


いつの間にか、祐からは笑みが消え、真剣な表情になっていた。


「俺ね、コロッケには醤油派なの」

「…は?」


真剣な口から出た意味不明の言葉に、俺は首を傾げた。


「ちょっ…!」


その隙に、祐に抱きしめられてしまった。


「いいから、最後まで聞けよ」

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