《MUMEI》
崩れる心
「何で…だと?」


俺の声は震えていた。


怒りか、悲しみか、寂しさか、或いは、その全てか。

よくわからないが、今まで抑えてきた感情が一気に溢れてきたような感覚がしていた。


『好きだよ、祐也』


毎日そう言ったのに


何も言わずに、自殺した旦那様


「俺、…俺にだって…あったんだ」


俺だけの普通


誰に何を言われても、構わない普通が。


旦那様がいる


旦那様に愛される


それが、それだけが、俺の普通だったのに。


胸が痛い


痛くて、息が上手くできない。


「おい?、祐也?」


近くにいるはずの祐の声が、遠くに感じた。


俺が聞こえるのは、煩い心臓の音と…


乱れた呼吸音。


視界が徐々にボヤけてきた。


(このまま、死ねたら旦那様のところにいけるのかな…)


胸を押さえ、目を閉じながら、俺はそんな事を考えていた。


俺が次に目を覚ました時には、既に文化祭は終わっていた。


俺は、疲労と栄養不足と、…精神的なものが原因で、丸一日眠っていたと


目覚めた場所


国立総合病院の看護婦が、説明してくれた。

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