《MUMEI》
背中の真実
目覚めた俺の前に現れたのは、以前、会った事のある

高山の両親だった。


高山の父・大(とも)さんと、母・楓(かえで)さんはこの病院に勤めていた。


一通り、俺の体調について質問した大さんは、最後に俺の背中について質問してきた。


その質問内容に、俺はため息をついた。


(さすが、名医というか、やっぱり高山家のあの、志穂さんの兄というか…)


学校の保健医や診療所の医師のように、背中の刺青には惑わされず、確信をついてきた。


(これじゃ、交通事故で出来たなんて言えないな)


大さんは、はっきりと


「その、背中の『切り傷』は何だい?」


と、俺に質問してきたのだから。


俺は、生まれた場所を売春宿からただのビジネスホテルに変えて、説明する事にした。


「…多分、俺のこの目から察するに、俺の父親が外国人だったからだと思うんですが…

俺の母親は、俺をホテルで生んで、置き去りにしたんです。

でも、本当はきっと俺を殺すつもりだったと思います」


普通は、包丁など持ち歩くはずはないから。


「でも、できなかったから、賭けをしたんだと思います」


それは、俺の命を賭けた賭けだった。

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