《MUMEI》

『…お呼びですか?』


機嫌を伺うように、部屋へ行くと、稜兄は仁王立ちで立っていた…。


『璃久(怒)!!』


『はっ!はいっ!』


『お前〜!勝手に俺の部屋に入っただろう!!』


『…はい。
洗濯物を取りに…。』


『で、俺の大切なコレクションはどこやった!?』


『…コレクション?』


『そうだ!!
俺が必死で集めたブラやパンティだよ!!』


『…あっ
…あれなら…捨てた。』


『捨てただと〜!!!
お前、あれは俺がナンパしまくって脱がせた大切な戦利品だぞ!…なんてことしてくれたんだ!!』


『…そんなの知らないよ。部屋汚かったし、片付けただけじゃん。…それに
女モノの下着集めるなんてサイテー変態!ド変態!』

『うるせぇ〜!!
お前脱げ!全部脱げ!!
ブラもパンティも置いていけ〜!!』


『キャッ!やめてよ!』


稜兄は大切なコレクションを捨てられて、かなりキレていた。
無理矢理、私の下着を奪おうと襲ってくる。


『やだ離してーっ!!』


『璃久が悪いんだ!
勝手に捨てやがって!!』


稜兄の手が服に入る…。
必死に抵抗したけど、ブラのホックに手がかかった。


“ヤバイ!取られる!”


私が半分、諦めかけた時



『やめろよ!!』


“渉”の声がした。


“…渉!?”


『稜兄!何やってんだよ!……璃久から離れろ。』


『渉!聞いてくれ。
こいつが…璃久が…俺に黙ってコレクションを…。』


『違うよ。…稜兄!
俺が璃久に“捨てていい”って言ったんだ。』


『何だと…てめえ!!』


稜兄が渉に殴りかかる!
…と思って私は、思わず目を瞑った。


ドンッ!タッタッタ…


“…ん?
…階段を降りる音?”


恐る恐る目を開くと、渉が立っていた。


『…稜兄は?』


『出ていったよ…。』


『…えっ?何で?』


『…璃久。悪かったな…
兄弟ゲンカに巻き込んじまって…。…大丈夫か?』


『…うん。私は、平気。
それより稜兄、追いかけなくていいの?』


『…いいんだ。
兄弟ゲンカはいつもの事だから…。』


渉はとても、寂しそうな顔をしていた…。


『でも…。
稜兄かなり怒ってたし、やけになって何か悪いこととかしないかなぁ…。
あっ!下着ドロとか!!』


『…ははっ。稜兄はそんな奴じゃないよ。
心配いらない…。』


『…そう?』


私は、稜兄と渉の関係がよく分からなかった…。
稜兄はあんなにキレてたのに渉に手を出さない…。
それに、渉は稜兄の事を好きなのか嫌いなのかよく分からない態度…。


“…この兄弟
…どうなってるの?”


疑問に思ったけど…とても聞ける雰囲気じゃなかったねで黙っておいた…。


『…渉。
私、稜兄が心配…。
黙って下着を捨てた事も謝りたいし…稜兄が帰ってくるまで待っててもいい?』


『…いいけど、何時になるか分からないぞ。
帰って来ないかもしれないし…。
それでもいいなら、好きにしろよ…。』


『…いい。待ってる。』


それから何時間経っただろう…。時刻は午前0時をまわっていた…。


『…璃久。もう遅いから帰れ。送っていくよ…。』


『でも稜兄がまだ…。』


『今日はきっと帰って来ないよ…。』


“………。”
私が、モヤモヤしたまま帰る支度をしていると、渉の携帯が鳴った…。


『…はい。…え?
…分かりました。
…すぐに行きます。
はい。…すいません。』


渉は、電話相手に恐縮しっぱなしだった…。


“…電話誰からだろう?”

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