《MUMEI》
「なんてことを!!」
「こら!聖服!」
「要らない!バカ陸離して〜!」
バンッ!!
目の前のウォークインクローゼットの扉が勢い良く開き
「聖ちゃん!!」
「み、みつぐ〜!!」
瞬間ぎゅうぎゅう抱きしめられ、俺もきつく抱きつく。
「聖ごめん、ごめん…、愛してる…死ぬ程愛してるよ」
「みつぐ〜、離れたくない、ずっと傍にいてよ〜」
わんわん泣く俺を貢はいっぱいあやしてくる。頭を撫でたり背中を撫でたり。
いつの間にか俺の中は貢の事だけでいっぱいになっていた。
この体温を俺は絶対に失いたくない。
パチリと照明がともされた。一気に視界に色がつきだす。
貢のシャツを握りしめたままふと見上げると
「!!顔!!」
「あ〜、ムカついたからちょっと殴った」
ちょっと笑いながらの陸ちゃんの声。
「ちょっとって〜!唇切れてる、ほっぺたも!貢、痛い?貢」
「痛くねーって、たいしたことない」
と陸ちゃんが言う。
「陸ちゃんは黙れ!そうやって直ぐに暴力にでるからシェスターが寄って来ないんだから」
「別にネコの方は寄ってこなくても良いし」
「は?訳わかんね、あのさ〜」
「聖ちゃん!良いから!お兄さんは聖ちゃんが可愛いくて俺に気合い入れてくれただけなんだから」
そう言いながら貢はソファにあったシーツを俺にてるてる坊主みたいにかけてきた。小さな声でボソボソと
『聖の躰は俺のだからな〜、もう誰にも触らせるの無しだかんな〜』
「――――ぅん」
そのまま後ろからすっぽりとギュッと抱きしめられた。
「どうしても付き合ってくれっていい寄られてはっきり断ったんだけど聞いてくんなかったんだとよ、で、言い合いしてる内に無理矢理キスされたんだって」
陸ちゃんは煙草を吹かしだしながら言った。
「へ?無理矢理?―――――だって陸ちゃんのあの言い方じゃ……」
「ごめんね、とっさに避けれなかった俺の不注意…、違う、俺の過去の乱れた生活がこんなこと起こしたんだ、ごめん、聖、本当に…ごめん」
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