《MUMEI》
ウワノ空
「早苗さんの言葉聞いて心決まった?」

「…まぁな。勇気をもらったって言うか」

さっきとは違う優しい笑みを返すと、有理は少しは協力しろよ、とさらに照れて言った。

もちろん、オレのできる限りの力で協力するつもりだ。

「……で、どうすればいい訳?」

「早苗、オレ、お前の実家に挨拶行くから連絡しておいて」

「なっ何するつもりなの!?」

「人聞きの悪い……。お前との結婚許してもらうためだよ」

オレがヒュウ〜と口笛を吹くと、環さんは手を叩いて喜び、早苗さんは有理より真っ赤になった。

「大人は手強いぞ、有理。責任とか生活とか収入とかなんとか言って止めようとするからな」

「……わかってる」

「おふたりがいてくれて良かったです」

「それはうまく行ってから言ってください」

「私達なんて、ただ見てることしかできませんしっ」

「オレ達はまだ十代だからさ、世界のこれっぽっちもわかっちゃいないけどとりあえずやるだけやってみる。それから世界を知ってもいいよな」

「当たり前じゃん」

「頑張りましょうね」


***


……と言う訳で、今日有理と早苗さんは、早苗さんの実家がある茨城県へ行っている。

まだ一回も連絡が来なくてオレが一番緊張してる。心配で仕事に集中できない。
――パシャッ

「!?」

「うわの空の有希くんの表情もいいよ〜」

「冗談はやめてくださいっ!」

「いやいや、結構いいものが撮れたよ」

「使わないでくださいよ!絶対に今、口開いてましたからっ」

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