《MUMEI》

「珠緒に会えるの楽しみにしているよ。」

僕が走り抜ける後ろで聞こえた千守さんの声が印象的だった。






それからというもの、僕は部屋に篭るように命じられた。
に、しても千守さんと氷室様との仲睦まじいあの雰囲気……羨ましい。
僕も氷室様を名前で呼べたらあんな風になれるかな……。


「ち……」

「話すな空気が汚れる!」

頭を殴られた。

嗚呼。
名前で呼ぶどころか話させて貰えない!

氷室様、僕を嫌いになってしまったのだろうか……


「にゃあ」

にーさんが擦り寄ってくれた。
……励ましてくれるの?

感動しちゃう。


今日も僕は部屋で留守番だ。
氷室様は僕をいたぶり毎朝登校する。

靴を嘗めても殴られても、氷室様は満たされないような顔をするのだ。

僕は氷室様を満足させることができないのだろうか。

いつか氷室様は僕よりも志雄君や他の誰かと仲良しになってしまうのだろうか。

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