《MUMEI》

着替えて、更衣室を出る。


と、



ドア付近にいたらしい子どもにぶつかりそうになった。



「うわ、ごめんね!!」



謝ると、俯いて立っていたその子は、エリカちゃんだった。



「…大丈夫?…どうしたの」



訊ねると、エリカちゃんは顔を上げた。



「…ねえ」



呟くような声。




「ん??」


「―…あの人、みつるのカノジョ??」


「…へっ!?」


「…だから、さっき来てた女の子、…みつるのカノジョ!?」



必死な目で訴えかけてくるエリカちゃん。

椎名くんに恋してる目。



「ちがうよ、全然」



私が笑ってそう答えると、エリカちゃんはほっとしたように微笑み、



「そっか!!」



そう言うと、すっきりとした表情で踵を返す。


二つ結びの髪が、踊るように跳ねた。

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