《MUMEI》

『…璃久。
悪い…俺、稜兄を迎えに行かなきゃいけねぇ。
…一人で帰れるか?』


『…稜兄見付かったの?』


『あぁ…
今、稜兄の行きつけのBARから電話があった。
金も持たずに飲んだくれて寝ちまったそうだ。
俺、迎えに行ってくる。』

『だったら私も行く。
一人じゃ、何かと大変でしょ?』


私は、渉に着いていった。初めて入るBARは大人の雰囲気でなんだか緊張する。


そんな私を尻目に、渉は手慣れた様子で稜兄をおぶり店を出ていった。


私は、飲み代を払い、タクシーを止め、家の鍵を開けた…。


“我ながらナイスフォロー”なんて思ってみる。


『…あぁ〜重っ。
全く…稜兄はしょうがねぇな…。璃久ありがとう。
マジ助かったよ!』


『…うん。』


口では迷惑そうに言ってるけど、渉の顔は全然怒ってなかった。
…むしろ、嬉しそう。


“…変なの(笑)。”


時計は午前2時を過ぎ、稜兄が無事に帰ってきた安心感からか、一気に眠気が襲ってきた…。


……………。


─午前8時30分─


『…璃久…璃久!!
起きろ〜!遅刻だ〜!!』

けたたましい渉の声で目が覚めた…。


“…ん?あれ。私…?”


まだ寝ぼけたままの私は、時計を見て飛び起きた!!


『…8時半!?』


『急げ!璃久!!
俺達、あのまま寝ちまったんだ!』


『うっそ〜(汗)!?』


私と渉は、無我夢中で学校まで走った…。


キーン…コーン…カーン…コンッッ♪


『ギリギリセーフ!』


なんとかチャイムと同時に校門に滑り込んだ…。


『おう!坂城と橘!!』


“ゲッ!?
先徒指導の和田だ…。”


『お前達、仲良く登校するのはいいが、遅刻するんじゃないぞ!…にしても、坂城が遅刻とは珍しいな?
何かあったのか!?』


『…いえ。別に。』


『…そうか?
…坂城は我が校の“期待の星”なんだからな!忘れるんじゃないぞ。』


『…はい。』


『それから、橘!!
お前はスカートが短すぎるといつも言ってるだろう!坂城と仲がいいなら、もっと彼を見習って、真面目に頑張らんか(怒)!!』


『…すいません。』


“和田めぇーっ(怒)。
ムカつく!!何で私だけ、あんな大きな声で、怒られなきゃなんないの?”


…その時はその程度にしか思ってなかった。


この日以来…私は学校を“地獄”と呼ぶようになったんだ。


和田の声は想像以上にデカかった為、私と渉が一緒に登校してきたという噂は一気に広まった…。


この後、私は“坂城渉”の人気の凄まじいさを身を持って知ることになる…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫