《MUMEI》 悩めるアニメーターアメリカはイリノイ州・シカゴ。 そこに、自宅のデスクで悩みに頭を抱る一人の青年がいた。 青年の仕事はアニメーター。 この若さで、アニメーション制作において一旦は大成功を収めたのだが、その権利関係云々(うんぬん)で大もめとなり、会社を辞める辞めないの大騒動にまで発展してしまったのだ。 「くうぅ…。 どうすりゃいいんだ、まったく。 せっかく掴んだチャンスがこんな事になってしまうなんて…」 儲かる話にはいつの間にかずる賢い大人達が権力を振りかざして群がって来る。 いつの時代もどの国でもよくある話と言えばそうなのである。 純粋にアニメーションに情熱を燃やす青年にとってはそれは歯がゆくて仕方のない事だった。 「ずいぶんとお悩みのようだね」 その声はどこからともなく青年の耳に届いてきた。 驚いた彼は部屋の入口の方に慌てて振り向く。 しかし誰もいない。 「ははは。 そっちじゃないよ。こっちだよこっち」 今度はデスク横の窓のブラインドを開けて外を見渡す。 そこにも何も見当たらない。 「ちがう、ちがう、こっちだってば」 青年は今度は冷静になってその声のする方向にゆっくりと視線を向けた。 しかし、そこには壁一面を覆った本棚と今にも雪崩の如く崩れてきそうな大量の本が重なり合っているだけだった。 次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |