《MUMEI》 言葉を話すネズミいや、ひとつだけ変わったものをそこに見つけた。 ヒクヒクと髭を動かしながら青年の顔を見つめるネズミの姿があったのだ。 青年は、 「悩み過ぎで空耳でも聞こえちまったのかな…」 と苦笑いしてそのネズミと向き合ったまま椅子に腰を降ろしかけた。 その時だった、 「空耳なんかじゃないってば」 それは紛れもなく目の前のネズミから発っせられた言葉だった。 途端に青年は驚きのあまり座りかけた椅子から勢い良く転げ落ちた。 「うわぁっ! ネ、ネズミが喋った〜!?」 ネズミは 「ぷふふ…、ごめんごめん、驚かすつもりはこれっぽっちもなかったんだけどね」 と半ば青年のコケっぷりに吹き出しそうになりながら詫びを入れた。 「これが驚かずにいられるもんか。 本当に今のは君が喋ったんだよね?」 さすが青年は夢を職とするアニメーターだけのことはある。 こんな奇々怪々な出来事に遭遇しながらも、人間の言葉を喋る奇妙なネズミと会話を始めたのだ。 そして、青年の問い掛けにネズミが答える。 「ああ、随分と人間の言葉を勉強したよ。 君に人生最大の危機が訪れるまでに何とかしなきゃと思ってたからね」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |