《MUMEI》

昼休み。


「ユキ〜、お客さん。」


「ん?」


ドアの方を見る。


そこには昨日入部したばかりの1年生の姿があった。


「どうかした?」


「えっと…


ですね、キャプテン…


あの…


自分…」


「…なんだよ?」


「すいません!!


やっぱハンド部辞めたいんですけど!!」


「…は?


何で?」


「いや…、


やっぱ昨日初めてハンドボールやってみて、なんていうか…


合わないと思ったんで…」


「…」


(合わないと思った?


何言ってる。


1年はパス練しかやってないだろ…)


そう思ったユキヒロだが、思い当たる節があった。


(前と…


同じだ…)


「そうか。


わかった。


先生には俺から言っとくから。」


「すいません!!」


「おい。」


「はい?」


「…ちょっと来い。」


「な…、なんすか?」


ユキヒロは1年生を、


男子トイレへと連れて行った。


1年生は怯えていた。


「…誰もいないな。」


「あ…、あの…」


「別に殴ったりするわけじゃね〜から。」


「…」


じゃあ何でこんなとこに連れて来たのだろう?


というような顔をしていた。


「…お前、服脱げ。」


「…」


顔を反らす1年生。


この人はもうわかっているんだ。


そう感じた。


「早くしろ。」


「…はぃ。」


その声は凄く小さかった。


ゆっくりと上着をめくり、


少しだけ上半身をユキヒロに見せた。


(…やっぱりか。)


「う…、う…、


すいません…」


「もういいよ…


悪かったな。


行け。」


「はぃ…。」


(…猪狩!!)

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