《MUMEI》
いつまでも子供
洋子さんの様子から、深刻な悩み事だと判断した私は、時間をかけて話を聞く事にした。


…当然、俊彦と子供達とは一緒に帰れない。


子供達は、『家におやつがあるから』と言うと、大人しく『帰る』と言ってくれた。


いつも聞き分けのいい子供達は、本当に、素直で可愛い。


問題は


「やだやだ! 蝶子と一緒じゃなきゃやだ!
俺も残る!」


今年三十になったというのに、いつまでも子供な俊彦だった。


「とし彦、しごとは?」

「「しごと、しごと!」」

子供達の方が、…大人だ。

ちなみに、何故か子供達は、私はママと呼ぶのに、俊彦は名前を呼び捨てで呼んでいた。


…下の二人はまだ、『トシ』までしか言えなかった。

「仕事よりも蝶子!」


「何言ってるの!?」


俊彦が真面目に働いてくれなければ、私はともかく、子供達が困る。


「そういう人は、今晩『お預け』よ」


「おあずけ、おあずけ!」×3


『お預け』


それは、夕飯抜きと


…夫婦の営みをしない事を現していた。


交際時や、結婚当初は強引に押し切られ、意味の無かった後者のお預けも


三人の子供達の協力のある今は、可能になっていた。

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