《MUMEI》
相談事
「毎回何て言ってるの?」

「秘密です」


(あんな事、他の人には言えないし…)


私は咲子さんの質問には答えず、改めて、洋子さんの相談事を聞く事にした。


私と咲子さんの前にはコーヒーが、洋子さんの前にはハーブティーが並べられた。


「…劇のネタが、何も思いつかないんです」


ハーブティーを一口飲んでから、洋子さんがポツリと言った。


「どういう事…ですか?」

事態が全く把握できない私は、洋子さんに詳しい説明を求めた。


洋子さんは、少しずつ、確かめるように説明を始めた。


洋子さんは、図書室の司書をしている高校ー


吾妻(あづま)高校で、演劇部の顧問をしていて、毎年文化祭で劇を披露しているの…だが


「今年も、あ、先月やったんですけど。

…あんまり、人が集まらなくて」


演劇よりも、クラスの出し物のメイド喫茶や、今年からものすごい新人が入った料理部のケーキ屋・それに、軽音楽部のライブ演奏に人が集まってしまったらしいのだ。


「うちの演劇部は、コンクールとかも出てないし、部員ギリギリだし…

来年も、この調子だったら、良くて予算カット、悪くて廃部…」


洋子さんの目に涙が浮かんでいた

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