《MUMEI》
魔法
 
 涙を両手で拭ったあと、気を取り直した様子でネズミがまた話し始めた。


「何も遠慮をすることはないんだ。
今とても困ってるんだろ?」


「ああ、そうだよ、とても困ってる。
 でもこの問題をネズミの君がどうやって解決してくれるって言うんだい?」


「魔法さ」


「魔法!?」


「そう。ただし使えるのはたった一度だけ。
 そして永遠にその効力を持続させるには君に三つ約束を守ってもらわないといけないんだけどね」


「人間の言葉が話せるネズミは魔法も使えるって?
 全くアンビリーバボーな話だ」


 肩をすくめて両手を広げて見せる青年にネズミが続ける。


「信じる信じないは君の勝手だ。
でも僕には恩返しをする義務がある。
 望み物は何?
お金があれば解決できる事なの?」


「いや。お金じゃ何の役にも立たないさ。
ただ僕は自分の作る大切な作品やキャラクターを守りたいだけ。これから先もずっとそうさ。
 世界中の人々に愛されるキャラクターたちを誰にも邪魔されないで描き続けていきたいだけなんだ」


 その話をじっと噛み締めるように聞いていたネズミは、真っ直ぐに青年の目を見据えて


「よし!やってみるよ」

と一言呟いた。

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