《MUMEI》 受け付けない食事誰もいなくなり、静かになった病室。 個室だから、いるのは、俺だけだ。 アパートの部屋とはまた違う、一人だけの空間は、俺をたまらなく孤独な気持ちにさせた。 先程まで聞こえなかった時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえた。 どのくらい時間が経ったかわからない。 「田中さん、お食事ですよ」 看護婦とは違う介護専門の女性が、夕食を運んできた。 無言の俺をチラッと見てから、夕食の入ったお盆を置くと、女性は足早に病室を後にした。 食事は主食がお粥で、他のおかずも食べやすい大きさに切ってあった。 しかし、俺は見ただけで嫌になるほど、食欲が無かった。 「食欲無いんですか?」 再び病室を訪れた女性に、俺は無言で頷いた。 女性は、お盆を下げずに、どこかに行った。 数分後。 コンコンッ 静かに病室をノックする音が聞こえた。 「入るよ」 俺が返事をしないでいると、控え目な声と共に、静かに扉が開いた。 「食べられないのかい?」 優しく俺に話しかけてくる白衣の医師 大さんに向かって俺は頷いた。 前へ |次へ |
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