《MUMEI》
普通じゃないお願い
「…元々、固形物はだめなんだって?」


(高山から?…それとも、志貴か、祐か?

まぁ、いいか)


別に隠す程の事でも無いから、俺は頷いた。


「精神的なものだろうけど…
今日は、いろいろあったみたいだし、無理しないでいいよ」


大さんは、食事を食べろとは言わなかった。


「あの…お願いが、あるんですけど」


「何だい?」


大さんは、優しげな口調で微笑んだ。


俺は、両手で白いシーツを握りしめながら、頼んだ。

「明日は、…一人にしてくれませんか?」


予定では、俺は明日精密検査を受けて、明後日、結果と経過を確認し、その後退院する事になっていた。


「一日中…かい?」


俺は、大さんの顔を見るのが恐くて、うつ向きながら頷いた。


「面会はもちろん、医師や、看護婦も、誰も入るなって…事?」


「… … はい」


俺は、自分でも普通じゃないお願いをしている自覚はあった。


しかし、明日だけは。


明日、一日だけは。


静かに、也祐の事だけを考えていたかった。


『一日だけだぞ、祐也』


俺は、忍に一日だけ、也祐の事を考えてもいいと言われていた。

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